相方と急いで電車に乗る。旅行に出るのだ。荷物をかかえて駅を急ぐ。
電車は特急で切符を用意する余裕もなく飛び乗ったものだから、車内で精算をすることにする。僕の財布には2000円しかなく、料金には足りない。
相方に貸しておいてと頼むことにする。
二人いた女性のパーサーは、お金を受け取ると、確かめチケットを渡す。
僕はチケットを貰い、席に倒れるようにして座り込む。荷物が重い。
間一髪だった。車窓には冬の空気が流れていくのが見える。
ぐらぐらしている歯が1本、ぽろっと抜けてしまった。
歯の表面は、すり切れて痛々しい。
連鎖的にボロボロと取れて、僕の歯は前歯の数本を除いて抜けてしまう。
この歳から入れ歯はどうかなと、歯茎の目立つ口の中を鏡で覗きながら思う。
僕はそこまで行くのに、あたたかい風船に抱きついてゆらゆらと飛んでいく。
不安定ながらも方向の操作は可能で、高台の公園から並ぶ冬の木々の間を縫って飛んで行く。
足下には公園の中にある池が見えたり、散歩する人たちが見える。ふわりふわりとした感覚が、風船のやわらかさと相まって何とも言えない。
そのうち、川と遊歩道が見えてくる。対岸はずっと深い森になっていて、こちら側には整備された遊歩道がのびている。
着地してしばらく歩くと、脇から歩道の砂利道に水が流れている。支流からの流れのようだった。流れの先に本流よりも細い川の流れが見える。僕は砂利道をぴちゃぴちゃ言わせながら歩いていくと、友人が追いかけてくる。
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