父が死んだ。とてもあっけなくあっという間だった。
うっと一声上げたかと思うと、そのまま倒れて帰らぬ人になった。
ぼくは思い出す。親戚が集まった頃、祖母を揶揄する父にそんなこと言ってると先に逝っちゃうぞなんて。
その時の父の顔を思い出す。すこしギクリとして口ごもってしゃべらなくなる。
周囲の親戚一同は、笑いながら食事と続ける。
ぼくは布団に横になりながらそのことを悔やむ。どうしてあんなことを言ってしまったんだろう。
あんなことを言ってしまったから、父は逝ってしまったのではないかと悔いる。
声を上げずに泣きながら、父は最後までずっと優しかったと心から思う。
涙があふれてきて、頬を伝っていく。胸の痛みで張り裂けんばかりになる。
ーー
ぼくは書類を出しに来たのだけれど不備があったことに気付く。
かばんの底に仕舞ってしまって、持ってくるのを忘れてしまったのだ。
ぼくは急いで階段を下りて、自分の自動一輪車のほうにむかう。
玄関へむかうと、先生方がなにやら仰々しくしている。大切なお客様が来るので、粗相のないようにと目を凝らしている。ぼくはその目を盗んでさっきこっそりとしまった自分の靴箱へ向かう。
しかしあっさり見つかってしまい、全力で走って逃げるが、おまえは何ものだと羽交い締めにされる。
ぼくは、書類はむこうにあるのだと声を荒げるのだけれど、上から押し込まれて声も出ない。
ぼくは、興奮して心拍が異常に上がるのを感じて、息苦しくなる。
最近のコメント