湖の近くで待ち合わせる。
この近くでは南米の羽根のついたトカゲが飛び回る。
仕事の相手はアライグマを連れて現れて、ぼくはじゃれようと手を出すと、アライグマは突然、ワンと吠える。アライグマも街で飼われると犬のように吠えるらしい。
ひととおり仕事の話をしたら、パラグライダーで山から下りて帰ることにする。
パラグライダーは始めて3年目。この空を飛ぶ感覚は何とも言えない。
そろそろ街が見えてきた。日野のあたりだろうか。駅近くの雑踏が見える。
ふと気づくと、どうも高度が足りない。いまさら昇れるはずもなく、ぐんぐん地上が近づいてくる。あっというまに、パラシュートが電線に引っかかる。
大きく振り子のように揺られながら、ゆっくりと動く時間。
マズイことになったと肝を冷やす。
地上の人々が驚いた表情でこちらを窺うのが見える。警官が、こちらを見やりながら走り出す。ぼくは大きく振られた反動をうまくつかって、空き地に着陸する。
警官は戻ってくる。ぼくは謝るべきかどうしたらよいのか話をしようといくつかの予行練習をするが、警官は忙しそうにぼくの前を通り過ぎ、あちらへ行ってしまう。取り残されたぼくはこのパラシュートを引っ張って収めるべきか、このままにすべきか春秋する。
ひとり居場所なく困っているとしていると、空からいくつものパラシュートがおりてくる。
あっというまに、駅前の暗渠のうえを複雑に往来する電線に、それらは次々と引っかかる。その様子を見ながら、ぼくはたいへんなことになったと思いながら、少しだけほっとする。
最近のコメント