ぼくは父と母と一緒にハイクをしている。いまみているのは、上空から見ると文字に見える細工のされた庭。そうはいってもビールケースの上に盆栽のような大きさのうす茶色い植物があるだけ。大したことないなと思いながら、早々に引き上げて、駅に向かう。
父と母の二人はいろいろしゃべりながら歩いている。ぼくはすこし先を歩いて、自販機を探す。紙コップ式の自販機で、オレンジジュースを買って、のどを潤わせて、先に駅に行っておくことにする。
駅につくと改札は無人で、スイカが使えるのかずいぶん怪しい。駅員もおらず、電車の時間が迫る。仕方がないので、とりあえず3人分の切符を買って、駅に置いておく。どうせ誰も居ないのだから、おいて置いて大丈夫だろう。
踏み切りを渡り、父と母を迎えにいくと、まだ話しながら歩いている。ぼくは電車の時間がないことと、切符の件を伝える。
小走りで駅につくと、たくさんの人がいる。改札のあたりに置いておいた切符が見当たらない。その近くで切符を持った男を問い質すと、半笑いでしらを切る。ぼくは一気に怒りがこみ上げる。大きな声を出すが、もう電車は到着せんとしている。
父と母は、仕方ないとSuicaを使って入っていく。ぼくは、ヤツを一度にらみそして視線を外す。その、すこし空気がゆるんだ瞬間に、手に持っていた飲みかけのジュースを顔に浴びせる。ヤツは、あっと声をあげる。ぼくはサッサと改札を通り、父母を探しながら、混み合った電車に乗り込む。
中ほどまで入ったところで、電車の窓からホーム上にいる父と母が見える。ぼくはイライラしながら、なんで乗ってないんだとなじる。無情にもドアはしまる。ぼくはドアを叩いて、ホームの二人に電話の仕草を伝える。うなずく様子が見えて、ぼくはどっと疲れる。
最近のコメント