恰幅の良い老練な男性の心理士が座敷に座っている。
ぼくは大切なことを伝えに来ている。
じつはあなたは近しい人から裏切られていると告げる。
いくつもの物証や情報をあげながら、愛する妻から同僚、身近なひと人がみなアナタを裏切ろうとしていて、アナタはそれに気づいていないと。
ぼくはそれを告げながら、ざまぁみろと思う。こいつにはそれを受けるだけど報いがあるから。
男性は、混乱し取り乱す。ぼくにつかみかかりながらこれは本当なのかと問い詰める。ぼくは他の人間をよび、距離をとろうとするがともども廊下まで押し出され、追い縋られる。
ぼくはビルの中に跳び出す。裏道や職員用の出入り口を駆使して、相手を振り切ろうとする。しばらくいくと、ビル内を走るちいさな一人乗りのモノレールが見える。あれに乗れば大丈夫だろう。
少し窮屈になりながら乗り込んで移動すると、閑散としたビルの屋上についている。
ぼくは降りて歩き出すと、オープンデッキになっていて、となりのビルまで繋がっている。その途中で、さっきの男は疲れ果てたように座り込んでいる。
ぼくはあくまで事実を告げる役割だから、失礼があっては行けないと思って、慇懃に礼を述べる。すると、疲れ切った顔でぼくの顔を見上げ、
一縷の望みがあるのかと聞く。
ぼくは、見た目幸せそうに見える子どもの写真を手渡す。心理士は写真を見ながらこの子だけはと涙する。
ぼくはそれを見て内心、冷めざめとあざ笑い、その場を離れる。
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